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幕間:三ヶ月の平穏と旅立ち





鈴実の家の騒動からあっという間に時間が過ぎて、五月の中旬になった。
私も皆も無事、中二になった。でも、これから勉強が難しくなるんだと思うと気が重いなあ。
そんな時、ラミさんから現実逃避の話が舞い込んで来た。
『そろそろ行きましょうか』
「え? またですか?」
また異世界に行くのかなぁ。電話越しのラミさんは何だか疲れてる声してるけど。
『ええ。私は早くあっちに戻りたいの。お父さん、お説教をしだしてしまいにはお酒を飲んでね』
大変だなあ。レリのほうは大丈夫かな。まあでも、それだけ娘の心配をしてたってことだよね。
『酔うと私にも飲ませようとするし。おかげで2日酔いよ……』
それは、なんとも。結局は強引に飲まされたんだ、ラミさん。
「それで、いつ行くんですか?」
『できれば今日。昨日、帰ってきて欲しいって連絡があってねー。みんなにも伝えておいて』
「ええっ? それはまた急な……まあ、構いませんけど。集合場所はどこですか?」
『マージュってお店で、五時に集合。レリが靖君以外は知ってるって言ってたから、場所はわかるわね? じゃっ』
そういうわけで、ラミさんの指示どおりに私はみんなに伝えてから靖と一緒にお店まで行った。
靖だけ知らないんだよね、あのお店。まあ、あのお店は女の子向きだから知らなくて当然なんだけど。
でも、どうしてあのお店なんだろう。魔物は出たけど、それ以外は普通のお店だったよ?





「あいたた……ううっ……行きましょう」
頭を抱えながらラミさんは今日は閉店を示す看板を無視してお店の扉を押した。
ドアベルが鳴りながらドアが内側へと開く。お店の中は照明がついてなくて真っ暗だった。
鍵を閉め忘れたのかな、比良さん。不用心だよ、空き巣にかもられちゃう。
「ラミさん、今日は閉店してるんですけど」
「大丈夫、ちゃんと告げてるから」
美紀の指摘も虚しく、ラミさんはつかつかとお店の奥に入っていく。レジも通り越して。
いつの間にそんなに神経が図太くなったんだろう、ラミさん。お酒のせいかな?
「姿を隠してないで出てきてください! 正体ばらしちゃいますよ。あなたは、光奈の」
え、比良さんの正体? どうしてラミさん、普通の人を軽く脅してるの?
「はいはい、わかったわよ……ラミちゃん、ひさしぶりね。もう二年振りになるかしら?」
商品の在庫が詰められているだろう扉の奥から、比良さんが出てきた。
あれ? 髪型も色も、前にこの店に来たときと違う。でも、そのくるくるした白銀の髪は。
「ええ。ヒラファーさんがこの世界に頻繁に来るようになってから早二年になります」
え、あれ。これはどういう事? 比良さんと、なんでも屋のヒラファーさんが同一人物?
「その話は置いておきましょう。もう、準備は出来てるわ」
「……ありがとうございます」
あ、そうだ。また異世界へ行くわけだけど、その間に授業が難しいところのに入らなきゃいいんだけど。
でも、お母さんにまた外出禁止令をだされるのが一番きついなぁ。
今度はちゃんと部屋に書き置きを残してしてきたけど、お母さんが見つける前に加奈と稚奈に破り捨てられそうで。
もしそんなことになったら、お小遣い減らされるかも。何かいい方法がないかなー、今からでも確実にする方法。
うーん、いくらなんでも手元にないから無理かな。……まあ、大丈夫かな。
破り捨てられても、ゴミ箱を空にするときにさすがに気づいてくれるよね? お母さんだもん。

『ヒュッ』

あ、考えごとしてたらもう着いたよ。でも、前帰るときに使った部屋じゃない。
この調度品に溢れた部屋は……誰かが使ってる雰囲気。もしかして、比良さんの部屋かな?
でもそうだったら比良さんもただものじゃないって事だよね、お城に部屋があるってことは。



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あとがき。 この部分は二幕でも三幕のどちらでもないなあと思いまして。 その間、繋ぎの部分ということで括りわけてみました。